千伊さまよりいただきましたパワフルライダー小説…!!
2号佑川×1号野島で大学生パロです!




.............................................





 「佑川と野島さんってさ、最近あんまり一緒にいるとこ見かけないよな?」

 構内につくられたカフェのテラスで、言ったのは小野だった。
 俺は瞬間的に動きを止めて、口もとまで持っていきかけたコーヒーをソーサーに戻す。

 「そう?」

 返した反応は笑みながら一言。
 俺の微妙な内心に気がついたのか、小野はそれ以上聞いてはこなかった。これだから、付き合いやすいやつだと思う。

 (べつに、聞かれちゃまずい質問だったわけでもないんだけど)

 というよりもただ、俺自身その答えを上手く消化できずにいるというだけで。



 −−−はじめてあなたを抱きしめてから三日が経った。



 最後の講義がかぶっていたために一緒に大学を出た小野と、最寄りの駅前で別れた。今日は太子さんと映画を観に行く約束があるらしい。
 嫌々そうな顔をつくりながら、小走りに駆けていく小野の背中はたしかにうれしそうだった。

 (『超合体戦士サンゴッドV』だっけ。あれ、Wだったかな)

 完全に太子さんの趣味だ。
 それでも、下手に一緒に暮らしているぶんあらためてふたりで遊びに出かける機会も少ないはずだから。小野のほうだってなんだかんだ楽しみにしていたのだろう。
 俺の見たところあのふたりはまだ最後までいっていないようだし、小野がたびたび太子さんに向けているじれったさそうな様子には心底同情を禁じ得ない。

 まあ俺だって、他所のカップルの事情にお節介焼けるような状況じゃないわけだが。
 尻ポケットから携帯を取り出して、開く。期待していたわけじゃない。しかし彼からの着信がないことに、俺は少しだけテンションを落とした。

 (思いっきり避けられてるもんなあ)

 野島さんってひとは、だれよりも単純なくせしてだれよりも繊細なもんだから、なかなかどうして扱いにくい。
 実際のところ、三日も顔を合わせていないなんてことははじめてだった。
 幼なじみという関係上、いつだって自分の日常は少なからず野島さんに起因して回っていて。だからこんなときには少し困ってしまう。
 自分の思考、行動、すべての身の置きどころが、正直…わからない。

 (もちろん、会いたい)

 しかしもう少しだけ、彼に選択の時間を与えてあげたいとも思うのだ。答えを急くつもりはない。
 それでもきっとこの瞬間も、野島さんは俺のことでぐるぐると頭を悩ませているのだろう。落ち込むといつものように恰好つけることも忘れて余裕をなくしてしまう彼だから、正直少し心配している。

 (伝えた気持ちを、後悔はしていないけど)

 ため息ひとつで憂鬱を流して、無意識に止めていた足を進めた。

 周囲が己をどう捉えているのかは知れないが、自分という人間は基本的にひどくものぐさで、物事を深く考えることが苦手だ。
 途中で面倒になって半端に投げる。とくにそれが暗い考えであるほど、逆に楽観的に思考変換できてしまうのだ。
 俺と比べての話なら単細胞人間の代名詞と言われている野島さんのほうがあれで、よっぽどいろいろなことを考えるタイプだったりする。
 普段言動の方向性が面白いくらいズレているからよく誤解されるけれど、本当は生きづらいだろうほどに純粋なひとだから。

 (小野に、映画おもしろかったか聞いておかなくちゃ)

 たしか同じ映画を、野島さんが観たがっていたはずだ。

 (あのひと、ああいうの好きだよな)

 日曜の朝恒例の戦体物アニメも、毎週欠かさずチェックしているし。あのキラキラした目を思い出して、思わず笑ってしまった。
 そうしてとりとめもなく、野島さんのことを考えながら空を見上げる。いまにも降り出しそうな曇天だった。



 「……、」


 そのときふっと感じた予感を、言葉にすることはむつかしい。

 ぐずりだした空を仰いで、思うのはまたあのひとのこと。
 野島さんは、雨が嫌いだ。幼子さながらに晴天好きなものだから、雨の日には決まって少し不機嫌になる。

 今朝流し見たはずの天気予報を思い出した。たしかに今日は夕刻から雨の予報だと美人のお天気お姉さんが伝えていた気がする。
 傘を忘れたのは失態だったが、いや、そんなことはどうでもよくて。

 (…今夜は、雨。明日は…)

 長年野島さんだけを見続けてきた俺の勘が、この曇天を合図だと告げる。
 なにしろ、あのひとは単純だから。


 別に、太子さんと妹子のような遠慮のない関係でも、芭蕉さんと曽良くんのような熟年夫婦然とした関係になりたいわけでもない。
 俺もただ単純に、野島さんのように。野島さんと恋がしたいだけなんだ。


 はじめてあなたを抱きしめてから三日。

 どうやらあなたからの返事を聞けるのは、雨上がりの明日に期待できそうだった。






.............................................


わああああ ああああああ

や…やばい…!!!

パワフルライダー萌えここに極まれり…!!!!!!
とある成り行きから千伊さんに小説を頂くことになったのですが、

なんだ この 破壊力は

「す、佑川抱きしめちゃったのーーーーー!!」とのたうちまわってしまいますよね…!!!!!!

2人の性格の描写から何からしっくりきすぎです…!!
等身大で恋をしていく2人があーもう!たまらん!!!!!!

千伊さん、素敵な小説をありがとうございました!!!
パワフルライダーズの未来は明るい…!!


後日談